ある日のバイト中。制服を着ていることからおそらくは女子高生である客が来た。
「いらっしゃいませー」と定型句を発して、カゴの中を確認。……なっ、なんだこれは!
なんと!カゴの中には大量の辛ラーメン!あの激辛で有名な辛ラーメン!
レジ業務を進めながら、それを見た僕にはある感情が湧いてきていた。
それは、対抗心。
今まで僕自身辛いものがあまり得意でないということもあり、辛ラーメンを食べたことはなかった。だって辛いらしいし。韓国人の激辛中毒の友達に勧められても丁重にお断りしていた。
がしかし、このような大人しそうなJkがまるで大好物であるかのように大量購入するのだ。大学生の僕が、そんなのにビビってる訳にはいかんくね?
帰りに辛ラーメン買って帰ろう。そう決めて僕はにこやかにJKを見送った。
「ありがとうございました。またお越しくださいませ」
--バおわ後、帰宅。
あぁ、ついに買ってしまった。バイト中に何度も「いや別に張り合わんでよくね?」と囁いてきた理性を無視して、帰りにコンビニで買ってしまった。
カップ麺が良かったけど、なかったので袋麺。まぁどちらにせよ辛いのは間違いないだろう。
晩御飯も特に用意してなかったので、今日の晩飯はこれ。うわぁー、改めて見ると辛さを強調したパッケージだなぁー。今更になって食いたくなくなってきたー。
そう言っても買ってしまったからには食う以外選択肢はないので、鍋で湯を沸かして、調理。
もうスープの粉が真っ赤なんやけど!いかにも辛そうなんやけどー!
完成。赤赤としてもう辛いことを主張しまくってるよね。
いただきますと手を合わせ、まずは1口。
--あれ?なんかあんま辛くないな?これなら余裕じゃない?
そう思った僕は、もう1口。
……と、ここできた。辛味の衝撃。舌がヒリヒリと焼ける感覚。喉に来る熱。頭皮には湧き出る汗。
「……かっら」
そう呟くのが精一杯の抵抗だった。
だが、まぁ、うん。食えないほどではない。めちゃんこ辛いけど、その中の旨味を知覚できるくらいの辛さだ。これならなんとか完食できる。
僕は汗と鼻水と涙をボロボロ流しながら、なんとか完食した--
泣くほど辛いとは思わず、JKに変な対抗心を抱いてしまったことを深く後悔した。
確かに美味しかったけど……美味しかったけど……!もう二度と食べません……