僕はウーバーの配達員をしている。たいていは自分の家周辺でやってるけど、たまに繁華街や高級住宅街に行くこともある。
その日は高級住宅街で配達していた。ももち浜辺りと言えば福岡の人間なら分かるのではなかろうか?
高級マンションに時たまあるクソ厳重セキュリティに苦戦しながらも配達を終えた僕の元に新たな配達依頼が届いた。
どうやら次の目的地はすぐそばのとんかつ屋さん。お届け先もそう遠くないみたい。ちょろい依頼だぜ。
とんかつ屋にはすぐ到着。ってか徒歩で来れるくらいの距離だったし。着いた時には既に商品はできてたみたいで奥からでかい袋が2つ出てきた。
商品を確認したところ、カツ丼が3つ。オイオイかなり大食いの人が注文したみたいだな?いや違うか。普通に考えて家族の晩御飯とかだよな。
バックに詰めて、固定して出発。5分もかからずに配達先に到着した。
ちょっとデザイン良さげのマンションって感じ。さっきのマンションとは違い、クソだるセキュリティではなさそう。インターホンを鳴らしてマンションに入る。玄関のピンポンを押して、出てきたのはおばあちゃんだった。
小綺麗で、貴婦人って感じ。このおばあちゃん1人でカツ丼3つも食うのか?と一瞬思ってしまった。さすがにそれはない。
そしておばあちゃんの左手には現金。この方は現金支払いを選択しているため、僕はこのおばあちゃんからお金を頂かなくてはならない。具体的には6000円いかないくらい。
僕の両手が商品で塞がってることに気づいたおばあちゃんは、
「これじゃ受け取れないわね。ちょっとー」
と家の奥に呼びかける。すると出てくるヘルパーっぽい人。しかも2人。
ここで僕は合点がいった。カツ丼3つはこのヘルパーさんたちの分も含まれているのだろう。
ヘルパーさんが家の奥にカツ丼を持っていくと、おばあちゃんは現金を渡してきた。
「えーと、5900円ちょいになります。(細かい数字はもう覚えてない)」
「はいこれね」
と、おばあちゃんから渡された金額は6500円。ん?500円いらんぞと思い返そうとしたら、
「お釣りはいりません。残りはYouのものです」
……な、な、なんだってー!!!
500円ちょいもチップくれるっていうのか?!さすが貴婦人!余裕のある暮らし!
僕はありがたく受け取って退散。
内心で「おもしれー女」とか思ってた。失礼やな。
他人のことYouって呼ぶおばあちゃんの強烈なキャラに痺れてしまい、もう僕は感服。僕も言いてー!残りはYouのものですって言いてー!と興奮してた。
まぁなんにしろ自分がジジイになった時に同じようなことができるようになっていたらいいな、と思う。