この本に僕が出会ったのは小学2年生の頃だった。母が持っていた本だった。タンスの中に無造作に入っていたそれを取り出して、読んで衝撃を受けたことを覚えている。
寄生虫に対する畏怖と、不気味なものに対するワクワクさ。この書籍を書いた人間への尊敬。そういう類のものを抱いたのを覚えている。
なんで母が持っていたのか謎だし、なんでそれを読んでみようと思ったのか今思えばかなり謎だが、この本は僕の幼い記憶に強く残っている。
春に福岡から関東に引っ越してくる時、持っていた本をかなり売った。その時に僕の本棚の奥から、この本がでてきた。
この本に書かれていた「寄生虫館」なるものが東京にあることをふと思い出す。目黒寄生虫館。東京は目黒に、筆者である亀有了が建てた小さな博物館。
2017年にソウルに寄生虫博物館が開館するまでは、世界で唯一の寄生虫の博物館だった。
その寄生虫館にこの本持って行ってみたいな、と思ってこの本は売らずに一緒に持ってきた。
--いよいよ来週に、目黒寄生虫館に行く予定が出来た。関東に来て以来、ずっと行きたかった場所だ。僕はまだ開封しきっていないダンボールの中からこの本を取り出す。復習として読み直して、寄生虫館に持っていくためだ。
もう10年振りくらいに読んだはずなのに、思ったより内容は覚えていた。フタゴムシやサナダムシ、回虫やシーラカンスからね発見された新種の寄生虫の話。正しく他のところでは聞かないお話の数々。
中には、寄生虫を自分の体で飼っている人、寄生虫を自ら食べちゃう人の話まで出てくる。ここまで来るとさすがに真似出来ないけど、それだけに他で聞くことはまず無い。
寄生虫館の展示に関しても、詳細に説明されていた。これ1冊読めば、恐らく一緒に行く友人に解説することまでできてしまう。
そしてこの本で伝わるのは作者がかーなーり寄生虫が好きということだ。文章の端々から寄生虫が好きで仕方ないということが伝わる。だからこそ小学二年生の僕でも楽しんで読めたのだろう。
まーそりゃ寄生虫好きすぎて博物館作るくらいに人だからね。
ちなみに作者である亀有了さんは2002年に亡くなっている。まだ生きていたらサインのひとつでも貰いたかったけど、これはしょうがない。
この本、寄生虫に関してあまり知らない人にほど読んで欲しい内容だ。マイナスなイメージを持ちがちな寄生虫の本質が分かる。20年以上前の本なので手に入れるのに苦労すると思うけど、気になる人は是非読んでみて欲しい。