僕はよく散歩する。疲れたとき、なんも考えたくないとき、リフレッシュしたいとき……そんな時に家を出て街を練り歩く。夜でも昼でもそこに見える景色は様々で。それまで気づきもしなかったふとしたものを見つけるような時間。
僕はそんな時間を提供してくれる散歩という行為が好きだ。
今もよく散歩する。僕が住んでいるのは神奈川のとある住宅街。地元は福岡なのだけど、こちらに越してきてもう1年が過ぎた。こちらの散歩も毎回新しい発見があって面白いのだけど、そのたびに思い出されるのは地元。大学時代の数年間を過ごした姪浜である。
姪浜、というのは福岡市内の地名だ。僕は昔そのあたりに住んでいた。住居の近くには室見川が流れ、河川敷が整備されている。
少し歩けば博多湾にも行けて、福岡タワーも徒歩で行ける距離だった。福岡タワーって単語、甘酸っぱい記憶を思い出すね。
博多湾の朝焼けの景色が、好きだった。夜更かししすぎて空が白んできたら、財布とスマホだけ持って海岸へ。朝日を眺めながら缶コーヒーに口をつける。そんなことを思い立ったらすぐできた。今は前日から準備しないとそんなことできないだろう。
博多湾から室見川に沿って整備された河川敷。ここは四季折々の姿を見せる。様々な鳥、草花、魚。朝の散歩で出会うでけぇ渡り鳥。遊歩道を歩くカモの大群。カモに餌やってるおじいさんと雑談したこともあったっけ。「カワセミも来るんだ」と楽しそうに話してくれたことを覚えている。
昼もよいけど、夜もまた乙だった。上流の方に向かって歩いていると、一本だけぽつりと桜の木。夜桜は、その時は僕だけのもので、とても綺麗だった。
秋の夜には、若者が網を投げていた。何をしているのかと尋ねると、「テナガエビをとっている」とのこと。あぁそうか、室見川がテナガエビが結構とれるんだっけ。母からその話をされて「僕甲殻類アレルギーなんだけど、皮肉?」と答えたのを思い出す。僕もアレルギーなかったら混じって夕食のおかずを取りたかった。
そうやって思い返すと、室見川は散歩するには絶好だったと実感するのである。いつ行っても楽しかった。すぐそばにあるのに、行くたびに新しい発見があった。
またあの河川敷を歩きたいな。別に今の散歩が楽しくないわけじゃないけど……ああいう場所が近くにあるってのは思っていたよりも幸福なことだったのかもしれない。
カメラロールに残ってた数少ない室見川のおもひで