恋愛小説を読み……恋愛小説と言っていいのだろうか【恋する寄生虫】
以前お散歩していた時に気まぐれに買った小説、恋する寄生虫。
タイトルをなんとなく見たことがある気がするし、フタゴムシってそんな風に呼ばれる寄生虫のことも知っていたからなんか親近感が湧いて手に取った。
少しずつ、空いてる時間に数ページずつ読み進めていった。
最初はかなり鬱な男性の人生語りから始まった。読んでいてあまり気分の良いものではなかったが、その様子は思ったより容易に想像できてしまった。読むのを止めるほど不快というわけでもなかったので、ページをめくった。
しばらくして少女が出てきてから、これは恋愛小説なのだ、と気がついた。だんだんと心の距離が近づいていく彼らの情景は、僕に十分な楽しみを提供してくれた。
少女は寄生虫が好きだった。物語の各所に挟まれる寄生虫についての話は、何かを暗示するかのよう。フタゴムシの話は最初に出てきた。離れると死んでしまう、一度巡り合ったら2度と離れない「恋する寄生虫」。結論から言えば、フタゴムシはこの物語の結末まで暗示していた。
殆どが現実に基づいた物語の中で、一つだけ明確なフィクションがあった。…このフィクションは運命を決定づけるそれになっていた。
まさしくその恋は仕組まれたもので、物語の最初から決まりきっていたあらすじである。舞台装置であるそれに踊らされていることを彼らは自覚する。
自覚して、その上で恋をしていた。
「自らが操られることを受け入れた人形には、果たして自我はあるのか?」
その疑問がずっと喉の奥にいる。そんな不安定な感情を読者に持たせたまま、物語は結末に向かっていく。
結末は、ハッピーエンドとも取れるし、バッドエンドとも取れる。あえて分類するならメリーバッドエンドだろうか?そんな解釈の余地を残す終わり。
最終的に舞台装置から与えられたものではない、彼ら自身の意思が表出する。僕はこの終わり方はかなり好きだ。スッキリはしないけど、考える余地を残してくれる。
読み終わった時に抱いた感情は、恋愛小説を読んでいる時に感じるそれとは大きく違うように思えた。なんかキュンキュンした感じじゃない。わかりやすい言葉で書かれた哲学者読んだ後のような気持ち。
ジャンル的には間違いなく恋愛小説なのだけど、そうは感じさせない、面白い小説だった。
ちなみに、物語の途中で目黒寄生虫館が出てきてテンション上がった。あそこってデートスポットになるんだね……
