うちの父親はマガジン派だった。毎週マガジンを買ってきていたので、僕は自然とそれを読んでいた。
印象に残っている作品はいくつかあるのだけど、その中の一つが「聲の形」だ。そんなに長くない作品だったと思う。確か一回読み切りで掲載されて、そのしばらく後に連載が始まっていたと思う。
読んだのは中学生の頃だったと思うけど、今でも概要を思い出せるくらいには印象的だった。耳の聞こえない少女と、いじめっ子だった少年のお話。心が痛くなることもあれば、あったかくなることもある不思議な作品だった。
もうすぐ10年くらい前の作品になると思う。最近になってツイッターで見かけて、そんなのあったなぁと思い出した。思い出すと、細かいディティールとか気になったので、読み返してみることにした。マガジンの公式アプリでちょっとずつ読むやつ。あれで読んだ。最後の方は有料だったからそこだけ買って。全7巻。
学生の時に読んだ印象を大きくは変わらない。ただ、あの頃は「なんとなくいい話だたな」と思いながら読んでいたのが、今だからこそテーマがなんとなく見えるような気がした。
耳が聞こえないっていう象徴的な所から来ているタイトルと思っていたけど、多分描きたいのはそこじゃないんだろうなって。主人公はいじめっ子だった少年である石田なんだけど、彼はあるきっかけでいじめられる側になった。周りの声を聴かないことで自分を守っていた彼だけど、耳の聞こえない少女――西宮と再会したことで段々と周囲を見るように、聴くようになる。
その周りの声を聴くようになる過程というか、成長というか……そういうのが描きたいものだったのかも……なんて。
石田の成長ももちろんなんだけど、それにつられるように周りも成長していく。西宮もそうだし、サブキャラの何人かも精神的な成長をしていて……善いな……こうやってぶつかって人は成長してくんだろうな、と思った。
でも、逆に全然成長せずに、今のままでいいと増長するキャラも居て……学生の頃はそんな違いに気づきもしなかったけど、今見たらもどかしかった。お前のことだぞ、川井。逆にサブキャラで一番成長してると思ったのは真柴君。客観的立場にいるからこそ、自分と比較して冷静に見つめなおすことができたのだろうか?
中学生の頃に読んだ時と印象が大きく変わったのは植野。いやな奴ってイメージが強かったけど、一番ちゃんと相手と向き合ってるし、周りが思ってもやらない、言わないことを言う損な役回りになってる。どういう感情で……ってところも見えやすいし(主人公にとってはそうじゃないだろうけど)、複数人との対比のキャラでもあるように思う。読み直して僕は好きなキャラになった。
だたし、川井。あの子は好きになれない。昔ほど憎悪もなく「いるよね、こういう子」くらいの気持ちだけど、人の気持ちがわからず、自分の正しいと思う軸で動いてる。それを他人からどう見られるか考えずに行動する上に、それで自分が危うくなったら自分を守ろうとする。現実にもよくいるけど、仲良くなればなるほど嫌いになるタイプだ。
そういう妙に生々しいところが、面白かったのかな、なんて。
久々に読み返すと、新しい発見もあって面白い作品だった。