5月中旬。
まだまだ梅雨の気配を感じさせない澄んだ青空。遠くを見ると、山々を隠すような入道雲。半袖で外に出ても肌寒さは感じず、かと言って汗をかくほどじゃない。まさに最高に丁度いい季節と言えるだろう。
ようやく春の花粉も納まり、僕もなんの憂いもなく外を歩き回れる。燦燦と照り付ける陽光がまだ少し優しい。梅雨と春の短い緩衝地帯。この時期が一番最高なのだけど、それを表す名前を僕は知らない。
こんな良く晴れた日には、すっかり窓を空けて外の新鮮な空気を飲み込みながら仕事をする。今の時期は天気予報に雨マークがない限りは窓を空けっぱなしにすることもざらだ。それだけで気温も空気もちょうどよくなる。パソコン横に置いた二酸化炭素計は適正値を示し続けている。
こんなに過ごしやすい気候なら、仕事ももちろん捗る。恐らく通常の1.5倍くらいは効率上がっているのではなかろうか。ディスプレイに映る小さな文字が心なしかはっきり見える。
しかしまぁ、そんな素晴らしい気候でもずっと仕事に集中することは難しい。どうしても眠くなったり、足が痺れてきたり、なんとも言えない怠さを感じることはある。就業時間ずっと集中し続けるなど土台無理な話なのだ。こんな時に大事なのは、如何に早く気持ちを切り替えられるかである。
僕はそんな時、決まって外に出る。外に出て少し散歩し、軽い運動で血流を良くする訳である。今なら晴れた散歩道はすこぶる心地よく、気持ちも体もリフレッシュできる。歩くだけで楽しい季節なのである。
僕が散歩する時間は決まって音楽1曲分である。それ以上は仕事の連絡へのレスポンスが遅れるのが心配で。1曲が始まる時に玄関を開け、出来るだけそれが終わるまでに帰ってくる。
だいたい3分、曲によっては5分程度で、あまりにも近所で目新しさは無い……とも言えない。近所であっても季節が違えば別の顔を見せる。
例えば、先日は横の家の花壇に菜の花が咲いていた。菜の花独特の香りが漂って、一輪しかないのについ河原の菜の花畑を連想した。
雛芥子はすっかり花弁を散らして、その茎だけが乱立していた。春の終わりを感じさせる。
玉紫陽花がいくつか咲いている。姫紫陽花はまだだけど、どことなく梅雨の到来を予感している。
視覚的にも楽しいし、スッキリした5月の青空の下を歩くだけでも気持ちいい。ずっとこの季節だけが続けばいいのに、と思う。