ルームシェアを始めて3か月ほどした頃、唐突に事件は起こった。
「おい!おい!おい!ちょっとちょっと!」
玄関からドタドタと音を立ててやってきた同居人が目を見開いて、そう呼びかける。もう既に完全に嫌な予感。恐れていた事態が起こってしまったかもしれない。顔面蒼白でカイジにでも出てきそうな雰囲気を漂わせる彼の様子が、そう予想させる。
「やつが出た!……玄関にやつが!」
――予想的中。来ちまったか、この時が……生活の内に現れる害虫。人類からのヘイトを一心に集めるあの虫。カサカサするGのつくヤツ。ついでに僕はあいつのアレルギーを持っている。
呼ばれるがままに玄関へ。乱雑に並んだ靴の隙間に、やつがいた。黒光りする甲殻、周囲を探るような触覚。見るだけで生理的嫌悪を催すアイツ。
「おい、なんか撃退するものないか?こう……最悪新聞紙とか?!」
「新聞なんて取ってないだろ……ちょ、ちょとなんかないか見てくるからソイツ見張ってて!」
そう言って僕はリビングに戻る。なにか……何かやつを撃退できるものはないか……なにか……ふと、そこで棚のコップが目に付く。あれは……ビスマスの実験で使ったコップ!あれは確かもう飲み物とかには使わない!Gを捕まえるには……最適!よし、これを持っていこう!
「持ってきたよ!これ!」
「コップ?!これで捕まえろってか?!なんで?もっとなんかあっただろ!ゴキブリぶっ殺し棒とか!」
「そんなのねぇよ!いったん捕まえて考えよう!ほら、俺ゴキブリアレルギーだから頼む!頼んだ!」
僕はそう言って同居人にコップを渡す。
「お前アレルギーったって食わなけりゃ行けるだろ!食わすぞてめぇ!」
言いつつも同居人はコップでGを捕獲。さて、これからどうするか……いったんリビングに戻って武器を探すが、中々良いものが見つからない、う~む仕方ない。玄関だし少しずつ移動して外に逃がすとしよう。
ということで同居人がちょこちょこ動かすが、一瞬生じた隙間からGが逃げだした!完全に見失う。どこの靴の下に逃げた?目を凝らすと、靴の下から触角が見えた。
「よし、僕がドア開けるからその瞬間に叩き出せ」
そう指示すると同居人は頷く。
「よし、行け!」
声と同時に僕は扉を開き、同居人が靴で叩きだす。瞬間扉を閉じる。
「やったか……?」
「わからん……とりあえず居ないが……」
ちゃんと靴を全部ひっくり返して確認。やつの姿はない。何とか撃退できたようだ……
おっそろしい事態だった。何か……対策をしなければ。やつが出てくるたびにこんなことをしていれば精神がもたなくなる。