ーー古民家カフェ。
僕は最近カフェ巡りを趣味としているわけだけど、そう呼ばれるジャンルのカフェが好きである。
古臭さの中にあるノスタルジー。雑多で光の多くない空間は心に落ち着きを与え、生活の中の渇きを潤す。
ありきたりで使い古されたエモーショナルだけど、それは使い古されるだけの魅力がある。
ゆえに僕はそういう味のあるカフェが好きである。
綱島、昼過ぎ。
この日僕は新たにインスタで見つけたエモーショナルがどれほどのものか見定めるためにそのカフェを訪れた。
インスタ見た感じ「旅がコンセプトな、アジアンテイストのカフェ」とのこと。
それがこちら「POINT WEATHER」である。
外観から感じる圧倒的エスニック感。うむ、僕の大好物である。
ガラス張り、横開きの扉。これはエスニックというより古民家要素。うんうん、実に絶妙にマッチしている。
外観を撮って、扉を開けようとしたときに立てかけられた黒板の文言が目に付く。
「産休のため、しばらく夕方の営業はお休みします」
なるほど、夫婦でやってる個人店って感じなのかな?と裏事情を憶測しながらちょっと立てつけの悪い扉を開ける。
旅ーーというだけある。世界各国のいろんな雑貨や本が所狭しと並んでいた。
手前のテーブル席に通される。
テーブル席で一枚。
あー、良い。人々の一瞬の寄り道を凝縮したような、雑多だけど心安らぐ感じ。
積まれた雑誌のジャンルはバラバラで、写真集や子供向けの童話、旅行記などなど。僕は玄関上に立てかけられていた「九龍城探訪」という本が気になって仕方なかった。あれ、どっかで見たことある気がするんだよね。
頼んだドリンクはチャイ。
その中でも期間限定でお勧めされた「エルマチャイ」である。
香りはショウガとよくわからんいい匂い。多分スパイス。
カップが熱々すぎてしばらくふーふーしてから一口。ふーふーしすぎて「熱かったらカップ変えましょうか?」と言われてしまった。
じんわりとした甘みとショウガ、そしてスパイスの香り。
あーあったまる。この日は特に冷えたので、芯からあったまるこれは最高の飲み物である。
ちびちびと飲みながら、適当な雑誌を取って目を通してみる。それは写真集で、日本のなんかの賞を撮った写真がいっぱい載っていた。一枚、一枚。自分の感性と照らし合わせながら見る。贅沢な時間の使い方だ。
合間で飲んでいたチャイは読み終わるころにはすっかり冷えていた。
人も多すぎず、生活の隙間の異国のような雰囲気。うん、好きだね。また暖かいチャイを飲みに来よう。
そう思いながら会計を終えて店を出る。玄関前で振り返って「ごちそうさまでした」と言ったとき、瞳に映った情景は人の営みを旅にたとえた素晴らしいものだった。
うむ、最高のエモーショナルでした。いいカフェに巡り合えたね。