「チ。ー地球の運動についてー」感想
最近はアニメを見ることもかなり減ってしまった。しかし学生時代にあった「自分はオタクである」という自負に駆られて、毎期ひとつくらいは見ようと意識している。
今季のひとつくらい枠は「チ。ー地球の運動についてー」だった。
きっかけはシンプル。僕の好きなアーティストであるヨルシカがエンディングを担当したから。それくらいのシンプルな理由で見始めた。僕は結構音楽からアニメを見ることが多めだ。
ーー以下、ネタバレあり。
天動説と地動説の話
時は15世紀。一神教の力が強い中世のそこでは、一般に天動説が信じられていた。逆に地動説は教会の権威を脅かしかねない異端研究とされており、それを研究するもの達は尽く処刑されていた。
そんな時代。少年ラファウはフベルトという老人から地動説を聞かされてしまい……その美しさに魅入られてしまう。
ーーと。そんな感じの始まりだ。
僕がこのアニメを見てまず思ったことは、「あまりにも現実的」なんというのだろうか……もちろんフィクションではあるし、中世の情景なんて知らないんだけど……どこか地に足が着いている。突飛もなく、異常な精神性もなく、1人が為せることは尽く小さい。物語とするには少し一つ一つの出来事が矮小……なんだと思う。個人には人生を変えるほどのものでも、別の時代の知らない人が題材としてあげる程のことでは無い……っていう出来事が続く。
僕はここが、なんだかリアリティがあって素敵だな。とまず思った。主人公のラファウは地動説をきっかけに「頭のおかしいやつ」、として扱われるシーンがいくつか出てくる。しかしそれは現代の価値観に染まった僕からしたらそこまでの異常性は無いことばかりで……いや、最後はさすがに異常だけど……異常を感じるラインが作品内と僕で明確に違う。
あー……これが良かったのかも。別の世界の一般の日常で起こった事件を垣間見てるような気がして。
主人公は変わっていくのに変わらない悪役
というわけでラファウがこの先、どういう風に世界に変えていくのかにワクワクしながら見ていた訳だけど……3話でラファウはあっさり死んでしまう。特に何も為すこともなく、服毒自殺であっさりと。
これには衝撃を受けた。3話で主人公死んだ……?マジ?本当に何も出来ずに……?残したのはせいぜいが、先人から受け継いだソレ……そんなことある?
そして物語は2部に入る。ラファウが残した微かなキッカケを元に明かされた地動説は、数人の人生を大き変える。
しかし、その彼らでさえ……ほとんど何も残すことが出来ずに死んでしまう。残せたのは自伝の一冊のみ。
彼らは異端審問官の手によって裁かれるのだが、その尋問官だけはラファウの時と同様に人物が出てくる。ノヴァクだ。仕事に真摯で冷血な彼は、慈悲の無い悪役に映る。
彼はこの物語置いて圧倒的な悪役だった。天動説を絶対に滅殺する悪魔だった。そんな彼の行動から、我ら視聴者はそういう世界観なのだ……と納得した。
しかし、3部の終わり。物語を終盤に差し掛かった所で告げられる「天動説を親の仇のように憎んでいたのはノヴァクだけ」という事実。一貫した悪役すぎるし、その割には悲劇に遭う彼に感情移入していた僕は、衝撃だった。そういえば……そうである。特に3部では天動説嫌いだった教会のお偉いさんも死んでいるので、その色が強かった。
異端は許されないが、天動説=異端が必ずしも成り立つとは限らない。これに僕が驚いたことは、まさに僕は情報に踊らされる当時の庶民と同じ考えになった上で、この作品を見ていたことの証左だろう。
作品の結末
そうして結局ほとんどが何も残せず、ただ一通の手紙のみを残して全ての物語は幕を閉じる。
個人的には最後の結末がとても良かった。「?」を示すタウマゼインという概念を示した上で、実在する人物であるアルベルト・ブルゼフスキが手紙のやり取りを耳にする。そこにタウマゼインを覚えた彼……という結末。
もしかしたら実在の人物が地動説を考えるきっかけに、このような誰かの命をかけた物語があったかもしれない。そんな現実への繋がりを見せる最後である。
誰の記憶にも残らなくても、繋いできたものが知らぬうちに後世に繋がるような演出がとても良かった。締め方として最高だと思う。
ラファウはなんだったのか?
最後まで見て気になるのはやはりラファウの存在だろう。最初の主人公として登場した彼は、最後にアルベルト・ブルゼフスキの家庭教師としても登場する。
死んだはずの彼が何故?となった。
ここには色んな解釈があるんだろうけど、個人的には「彼」は作品唯一のメタ要素なんじゃないかと思った。言うなればストーリーテラー。彼は誰かの狂気や恐怖のきっかけになっている。
そんでラファウが大きく関わった登場人物は2人。ノヴァクとアルベルト・ブルゼフスキである。
言うなればこの2人が本当の意味での主人公だったんじゃねーの?その主人公に影響を与える役割がラファウというメタ要素を持つキャラクターに与えられた役割なんじゃねーの?……なんて思う。
と考えると1部〜3部は実はノヴァクが主人公の物語で、最後だけ史実と地続きなので主人公が変わったんじゃないか……とも思うわけだ。
まぁ何も見てない適当な考察なので、この後に実際のYoutubeとかに溢れかえっているであろう情報を見て考えが変わるだろうけれど。
少なくとも自分はそう解釈した。
そんな点も含めて面白い作品だな、と思いました。見れてよかった。